「お礼回りで知る選挙の実態」
お世話になった支援者を訪ねた。ある大きな企業の社長は、今回は、事情があって私の幹部役員を降りた人であるが、選挙戦が押し詰まった段階で、全社員を集めて支援を訴えてくれた。私はその、熱い友情に感激し、氏の政治に寄せる高い志に敬服した。応接室で私を迎えた彼は、激戦を勝ち抜いたことを心から喜んでくれた。貴重な票の重さを感じた。
利根西のある経営者を訪ねた時である。私と話している社長の携帯が鳴った。その受け答えから私の事だとすぐに分かった。携帯の声は礼状をもらったことに対し、御丁寧にと、また礼を言ってきたのである。この社長は年来の同志であるが、今回は雰囲気がいつもと違うと感じとって、友人知人など八方に手を尽くして呼びかけ、当選が決まると、呼びかけた全てに礼状を出してくれたのである。一票一票の有り難さを感じた。
また、私の後援会が広がるある町の古い支援者の家では、こんなことも聞かされた。ある候補者の奥さんが主人が危ないから助けて下さいと言って、一軒一軒を必死で回ったというのである。中村さんは大丈夫だからというのでかなりの票が流れたのではとも言われた。選挙は、政策よりも、情によって動かされる部分があることを思い知らされた。
病床にいた妻は、このようなことを想像してあせり、そのことが一層、頭痛を激しくしたのかもしれない。
◆人の和を生かすことの難しさ。今回の選挙でも、運動員間の人間関係の難しさが悩みであった。選挙に積極的に参加しようとする人は、概して意欲的でありまた個性の強い人が多い。
意欲的だから自分の考えを主張し積極的に行動する。時に考えが違い協調できないことがあると衝突してしまう。今回もこのような摩擦がずいぶんあった。
組織を動かす場合の悩みと課題は、このような人々の力を如何に引き出すかである。
温和な人たちだけでは、困難な状況で道を切り開く力を生み出すことは出来ない。個性と意欲ある人を引きつけて動かすことの重要さは戦国の武将にとっても、今日の企業の経営者にとっても同様のことであろう。
トヨタの中には「スカンクプロジェクト」と呼ばれるチームがあるという。スカンクのように悪臭を放ち、また強い個性ゆえに人に嫌われる人々である。トヨタは、これらの人が常識にとらわれない発想で新しい企画を進めることを期待しているのだろう。
しかし、企業だから社長の命令でこのようなことが出来る。選挙で集まる人々は、給料をもらわないボランティアである。命令で動かすことは出来ない。ここに最大の難しさがある。人々を動かすものは、何のために闘うかという大義とそれへの自覚である。選挙は民主主義を支える基盤だ。そしてこの基盤はボランティアによって支えられる。民主主義を発展させることの難しさと面白さの一面がここにあると思う。
★土・日・祝日は以前からのご要望により「上州の山河と共に」を連載しております。
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