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2007年4月28日 (土)

『上州の山河と共に』連載(69)「旗揚げの時」

 いろいろな意見が出された。芸能人やスポーツ選手、評論家などの名前があげられた。芸能人やスポーツ選手については、

「中村のイメージに合わない」

 という意見が大勢を占めたし、著名な評論家などは、金がかかりすぎて呼べないということになった。また、実際に二、三当たってみたが、当選の可能性も分からない新人の為に前橋まで来てくれそうな人は見つからなかった。 

 群馬県内から適当な人を探そうという努力もしたが、選挙がらみのことであり、当選するのかどうか分からない新人ということで、やはり、耳を傾けてくれる人は見つかりそうになかった。

 「元東大総長・林健太郎先生に決まる」

 何回目かの会議が開かれた。クーラーのない事務所では、二台の扇風機が鈍い羽音をたてて回り、企画会議のメンバー達は、この日も、何か妙案はないかと額を集めていた。

 そのとき、誰かが突然大きな声で言った。

「林健太郎さんがいるではないか」

 室内にどよめきが起きた。

「元東大総長だ。こんな田舎に来てくれないだろう」

「いや、頼んでみるべきだ。中村さんの恩師で、パンフレットに写真を載せてくれたのだから、承知してくれるかもしれない」

 事務所の中は、にわかに活気づいてきて、皆の視線は私に集まった。実は、この問題が論議されるようになった時から、私の頭の片隅に林健太郎先生のことが浮かんでいた。

 しかし、現実のこととしてお願いするという意識には至っていなかった。それは、恩師とはいえ、高名な学者であり、東大総長までして、現在もいろいろ重要な公職についておられる先生が、生臭い選挙がらみの集会に来てくれる筈はない。また、そのようなことをお願いするのも失礼なことだ、という考えが意識の底にあったからである。

 しかし、今、問題が行き詰った状態で、共に闘っている支援者の中から改めて言われてみると、私は、心に掛かっていたもやのようなものが、にわかに晴れてゆくように感じられたのであった。

「さっそく、林先生にお願いしてみます」

 私は、立ち上がってきっぱりと言った。

★土・日・祝日は以前からのご要望により『上州の山河と共に』を連載しております。

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