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2007年3月17日 (土)

『上州の山河と共に』連載60回

 三人寄れば文殊の知恵というが、何人かが集まって会議を開くと、いろいろな良いアイディアが飛び出すし、また、意見をたたかわす中で、同志的な心の連帯が生まれてくるのだった。

 このことは一つの重要な発見であった。今まで一人でこつこつと歩き回って知り合った人達の中からグループを作ることができれば、そこからは、一プラス一は二以上の新しいエネルギーが生まれるに違いないと思われた。一つの体験から新しい理論が生まれ、それに基づいて、また、新しい行動が展開していくのだと気付くと、手探りでやってきた闇の中に一条の光を見つけた思いがするのだった。

 振り返れば、運動を始めてからすでに半年以上がすぎていた。もう、私一人で行動している段階ではない。自分一人の力は微々たるものである。これからは、如何に多くの人に協力してもらえるかに、この運動の成否がかかっている。こう考えると、私の運動も新たな段階に進むべき時に来ているように思われた。

 これからは、このプレハブ小屋を拠点として、出来るだけ回数多く会議を開くことにしよう、そして、これと並行して、従来のように、私自身が出かけて行って直接会うという作戦を続け、その中で、会議に出てくれる人を探してゆこう、私はこのように考えをめぐらせながら、新たな作戦に進む決意を固めていった。

 プレハブ小屋での会合は、中村塾の卒業生、妻の教え子、私の中学時代の同級生、宮城村時代の同級生、そして、定時制高校時代の同級生、といった順で開いていった。

 会議に参加するものは、ほとんど選挙に関しては素人であった。だから、具体的にどうやって運動を進めたらよいか分からない。

 中村塾卒業生たちの会合でのこと。

「先生、公職選挙法というのがあって、やたら選挙活動をするのはやばいって、おやじに言われてきたけど、大丈夫なんですか」

 もう二十五、六歳になっている筈のKが言った。

「うん、確かに公職選挙法では、選挙運動が出来る時期は決められていて、それ以外は出来ない。しかし、今我々がやっているのは、選挙運動ではない。中村のりお後援会活動なんだ。我々国民には、憲法で保障された政治活動権利があるんだ。そういう風に理解してくれないか」

「へえー、そんな、分かったような分からないような事言ってたんでは、ピンとこないぜ、先生。俺の仲間なんか、みな、選挙になんか行ったことがない者ばかりだ。俺が、先生に投票してくれって頼めば、みんな、投票するぜ。後援会に入ってくれなんていう言い方じゃ説得力がねえよなあ」

「馬鹿だなあ、お前、そんなこと、頭で考えて、適当にやれよ」

 Kの同級生Yの言葉である。

 こんな具合であるから、民主主義社会における選挙の意義というようなことから始めて、公選法の説明まで詳しく話そうとすると、

「まるで、昔の中村塾みてえじゃねえか。先生、俺達、月謝払わねえんだから、あんまり細かく教えてくんなくもいいよ」

 誰かが言って、みんながどっと笑った。

★土・日・祝日は以前からのご要望により『上州の山河と共に』を連載しております。

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