『上州の山河と共に』連載(55)「出馬を決意」
前にも触れた通り、久子さんが、妻の友人であったことから、笠原夫妻が私達の結婚の媒酌人をつとめて下さったのである。ご主人は銀行にお勤めということもあって、久子さんには、ご主人の分までもいろいろ御支援いただくことになったのである。
私は、訪問した人に後から手紙を出すことにした。それは、訪問の趣旨を良く分かってもらうと同時に、私の存在を印象づけることが狙いであった。先日は突然お邪魔して失礼したこと、良い県政を実現する為に、民主主義の原点に立ち返って頑張ってゆきたいので、よろしくご指導、御支援をお願いしたいということを簡単にハガキに書いて出すのである。
笠原久子さんは、訪問者リストの整理、住所の確認という作業から、ハガキの宛名書きまで手伝ってくれた。久子さんは、明るく陽気な女性であるが、私からリストを受け取りながら、時々、
「こんなことをしていて、本当に当選できるのかしら」
と、不安そうな表情で漏らすのだった。
「大丈夫ですよ。そのうち、段々、世間の関心が集まって来ますよ」
こう言いながらも、私の心の中にも不安はあった。
一軒一軒廻ってゆくと、色々な人に出会う。ある町内で、以前小学校の校長をしていたという老人に出会った時のことである。
「県会というのは、何をする所なのかね。市町村という直接の自治体があるのだから、県会なんて必要ないのではないかね」
老人は、私の顔を覗き込むようにして、先生が生徒に訊くような口調で言った。
「はあ、まず、県内全体を対象としてやらなければならない仕事があります。例えば、道路だとか、河川だとか、警察の仕事もそうです。それに、市町村に対する指導や助言の仕事があります。福祉や教育など、それぞれの市町村でバラバラのことをやっていたのでは困りますからね。それから、国と市町村の間に立って国の方針などを伝える役目もあります。」
私は、緊張して直立不動の姿勢で答えた。
「ふんふん、なるほど。ほんのちょっとわかった気がするな。しかし、今の群馬県議会は、何をやっているのかさっぱり分からないよ。これでは、困るんじゃないの、君」
「その通りです。今、地方の時代と言われ、それぞれの地方が頑張って、いい地域社会を実現しなければならないんです。その為には県が、市町村と力を合わせて頑張らなければなりません。そして、県会がその役割を果たす為には、県民の皆さんに、県政をよく理解して頂かねばならないんです。」
「その通りだ。そこで、あんたはどうするの」
「私は、県政を県民に身近なものにして、県民の意志に基づいた県政を実現したいんです。教育とか、福祉とか町づくりとか」
☆土・日・祝日は以前からのご要望により『上州の山河と共に』を連載しております。
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