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2006年10月28日 (土)

『上州の山河と共に』中村のりお著 連載(15)「だんご屋になる」

連載(15)ダンゴ屋になる」 

定時制の3年生の頃、私の商売の上で変化が起きた。煎餅の製造販売は率の悪い仕事であり、その上売れ行きも悪く、煎餅で利益を上げることは大変なことであった。前橋のお得意だけでは捌(さば)き切れず、高崎にも新しいお得意を開拓し、そちらにも自転車で卸しに行くようになった。

前橋・高崎間の道路は、当時、まだほとんど舗装されておらず、がたがたと振動が激しいものだから、売れ残って持ち帰った煎餅は、擦れて縁(ふち)に傷がついてしまう。その部分に刷毛(はけ)で醤油を塗ってまた売りに出すというような始末であった。

そんなわけで、何とかしなければと、私はかねがね考えていたが、あるとき、煎餅のもとである餅をついていてふと思いついたことがあった。

それは、この餅をこのまま丸めて串に刺したらダンゴとして売れるのではないかということであった。煎餅にするには、前にもちょっと触れたが、白米を粉にして、それを蒸して、餅にしたものを伸ばして、形に切って、乾燥し、これを焙炉(ほいろ)というものにかけて温めたものを焼いて醤油をつけるという、面倒で長い工程を必要とする。

これに比べたらダンゴを作ることの方がはるかに簡単である。父も賛成であった。早速、試作にとりかかった。ダンゴそのものを作るのは、串に刺しさえ擦ればよいのだから簡単であった。問題は、ダンゴにつける垂(たれ)の作り方であった。熱湯にザラメという茶色い大粒の砂糖を溶かしこみ、これに片栗粉を水に解いたものを流しこむ。これが大雑把な工程であるが、片栗粉の分量や、これを熱湯に流し込むタイミングなどによって熱湯と片栗との一体化がうまくゆかない。とろっとした良いものが出来たと思って、ダンゴに付けて見るとダンゴに付着しないで流れ落ちてしまったりする。市内のダンゴ屋から実物を買って来てその垂を分析し、まるで理科の実験のような作業を何度も繰り返した。

串に四つの丸い玉を刺した小さなダンゴ。小売価格は、15円、おろし値は350銭であった。試作品は煎餅のお得意先で売ってもらうことにした。はじめの反応は以外に良好であった。10時や3時のお茶のとき、また、子どものおやつに、便利で手頃な食べ物であった。恐る恐る始めたダンゴ屋であったが、何とかゆけるのではという見通しの下に、煎餅からダンゴへと全面的に切替えることになった。

はじめの内は、竹を買って串を作ることまで自分の家でやった。ダンゴの作り方といえば、白米を粉にして蒸して搗(つ)いたものを、粳粉(しんこ)餅、簡単に粳粉というが、この粳粉を細長い棒状の形に伸ばし、これを糸で括(くび)って切り離したものを串に刺すのである。(明日の日曜日に続く)

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