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2006年10月 7日 (土)

『上州の山河と共に』中村のりお著 連載(8)「小学生時代」

第8回 「小学生時代」
 小学校1、2年生の頃から、おもしろブックという月刊誌が出ており、クラスの松永という男が毎月とっていた。これを借りて福島浩や上野和仁等と回し読みをするのが大変楽しみであった。なかでも、山川惣治原作の劇画「少年王者」が面白かった。

 物語の舞台はアフリカ・コンゴの奥地である。ここに、住民から父のように慕われる牧師・牧村勇造が住んでいた。牧村は、どんな病気にも効く緑の石を発見する。これを狙う悪どい象牙商人の太田により、牧村夫妻とその一子真吾は、魔の山・マウント・サタンの出口のない谷底に閉じ込められてしまう。真吾はゴリラに育てられ、やがて密林の動物達から少年王者と呼ばれる、強く逞しい若者に成長する。牧村親子を探す救援隊の中には、美しい少女すい子がいた。魔人ウーラ、怪人アメンホテップ、黒人ザンバロ、黒豹ケルク、ゴリラのメラ、切り立った断崖と大密林。暗黒大陸といわれたアフリカは、私にとって夢と希望に満ちた憧れの存在であった。私は、物語の中に入り込み真吾少年になって胸をときめかしてすい子を危険から救い、手に汗をして魔人ウーラーと戦うのであった。 この他、おもしろブックには、サトウハチローのユーモアもの、久米げん一の「恐怖の仮面」という探偵ものなどが連載されていた。

 上野和仁は、三夜沢の赤城神社の近くにすんでいた。彼は大変なもの知りで、特に歴史上の人物について驚くほど良く知っている。学校の帰り道、荒木又右衛門がどうだとか、宮本武蔵がどうだとか得意気に話してくれる。私にはそれが羨ましかった。
ある日、福島浩と共に彼の家を訪ねて、彼の博識の秘密が分かった。おやじの書棚というのがあって、そこには、歴史小説がうず高く積まれていた。彼に頼んで一冊を貸してもらってから、すっかり病み付きになってしまった。上野は、父親の目を盗んでそっとぶ厚い本を私のカバンの中に入れてくれる。急いで家に帰ると、早速読み始め、夜は、ランプの下で母とかわるがわる声を出して夜更けまで読む。子供向けの猿飛佐助、塙団右衛門などから始めて、大人が読む太閤記、宮本武蔵、源平盛衰記など、上野の家の本はすべて読み尽くした。芝基紘や福島浩も、これらの本を盛んに読んでいた。福島、上野、芝、そして私と、学校の帰り道、上野から借りて読んだ本について語り合うのが楽しみであった。

 教育環境について言えば、当時は、のんびりとした時代であった。塾などは勿論ない。学校では割りと真剣に勉強したが、家に帰れば、子守り、麦踏み、あるいは薪拾いをさせられる。家では、趣味の読書に没頭した他は、勉強をした記憶はあまりない。しかし、この読書を通して国語の力、そして国語以外の科目や諸々のことについての判断力が身についたように思われる。特に歴史については、各時代の好きになった特定の人物を通して、その時代を見て来たようなイメージを自分なりに作り上げていた。
(明日の日曜日に続きます)

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