2024年9月13日 (金)

人生意気に感ず「元木・櫻井両選手の祝賀会で。総裁選告示に思うこと。フジモリ氏の死で甦ること」

◇11日、五輪・パラリンピックの選手に首相が感謝状を授与し「多くの国民に勇気や感動を与えてくれた」とたたえた。本県の元木咲良・櫻井つぐみの両選手が出席した。12日、育英大学主催の両選手の祝賀会が行われ、私は育英学園名誉理事として来賓席についた。中曽根弘文氏、山本一太知事、小川晶氏市長等多数の来賓が出席、両選手は金メダルを胸にして感動と感謝を語っていた。私は6月の壮行会にも出席し、開学7年という歴史の浅い同大学の選手が金メダルを得ることは奇跡に近いと感じたが奇跡は実現した。知事は栄誉を称える特別賞の授与を決定したと述べた。中曽根氏は金決定の瞬間、感動の声を上げたと語った。

◇12日自民党総裁選が告示された。上川外相が11日に立候補を表明し、斉藤経済産相は断念し9人の争いとなった。過去最多である。数日の状況から推薦人20人の確保がいかに難しいかを知った。9人それぞれが抱負と目標とする政策を語るが最重要は地に落ちた政治の信頼をいかに回復するかである。裏金事件を乗り越えてこの国をどう変えるか、誰がどのように変えるかが最大の課題である。

 文藝春秋の特集記事「自民党よ、驕るなかれ」を読んだ。その中で政治学者御厨貴氏は次のように語る。「地方の過疎化は深刻ですが人口が少ない分政治の力で現状を変えられる余地がある。地域の若者はそれに気付き市議会や県議会に出馬するようになっています。これが連携しながら国政に広がっていけば日本の政治も捨てたものではないと思います。

 ふるさと塾から来春の前橋市議選に4人が立候補するのはこの記事が示す新しい動きである。日本は人口減少が加速する中で萎縮し続けている。最も懸念されるのは日本人の心の問題である。全体としてハングリー精神を失い、特に若者には進取の精神が見られない。

 選挙に出手がいなくなり条例で議員の数を減らす所が出始める始末。地方議会の形骸化である。

◇フジモリ元大統領が死去した。私はかつてペルーを訪ね、ペルーの悲劇に接し衝撃を受けた。フジモリはこの国はなぜ貧しいのかと悩み大統領選出馬を決意した。アンデスの人々にはスペインに征服され鎖で繋がれた悲しい歴史があった。フジモリの出現にインカの末裔であるアンデスの人々は日本に期待してフジモリを応援した。アンデスが燃えたのだ。私の訪問後世界を震撼させた大使館占拠事件が起きた。ゲリラを制圧したフジモリはペルー・リブレ(ペルーは自由)と叫んだ。栄光と挫折の人生は現代社会に多くのことを投げかけている。(読者に感謝)

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2024年9月12日 (木)

人生意気に感ず「カマラ・ハリスの圧勝が意味すること。大統領選の行方は決まったか。自民党総裁選の行方は」

◇正に世紀の対決であった。私はトランプ氏に対する先入観を抑えようとしてその時を待った。それは呆れる程の悪行やスキャンダルである。トランプ氏の胸には前回の討論でバイデン氏を打ちのめした光景が焼き付けているだろう。一方のカマラ・ハリス氏は彗星のように現れた黒人女性でごく短期間で世の脚光を浴びた。数々のエピソードを最大の公式な舞台で効果的に全米の市民に届け得るかが勝負どころなのだ。2人はメモを見ることは許されない。第一印象はハリス氏の笑顔とトランプ氏の追い詰められたような落ち着かない表情であった。真剣勝負の手段は拳銃でなくい日本刀が適当に思えた。女性剣士は正眼に構えて突き進む。その姿は新鮮で時々剣先がキラリと光った。

◇討論会はハリス氏の勝利で終わった。直後のCNNの世論調査で人々は63%対37%でハリス勝利と答えた。私はハリス氏を女性剣士に例えたが、最初の一撃は歩み寄って握手を求めたことだ。理性的で勇気ある政治家という印象を与えた場面であった。トランプ氏はうろたえているようにも見えた。ある日本の専門家はこの場面を見てハリス氏勝利の印象を持ったと語る。トランプ氏は事実無根のことを繰り返し司会者に間違いを指摘された。ハリス氏はそれを笑い飛ばして相手にしない。その一例が不法移民が犬や猫を食べているという発言だ。討論会の大きな目的の一つはどちらが大統領にふさわしいかを国民に判断させることだ。ハリス氏の「全ての米国人のための大統領になる」という発言は説得力をもって国民に伝わったに違いない。感情に動かされるトランプ氏と冷静なハリス氏。米大統領の責任は極めて重い。核戦争の危機も叫ばれる現在その冷静な決断力は全世界の運命に繋がる。私は今回の討論会に関し1960年のケネディ対ニクソンの対決を想像した。今回のハリスはケネディ以上の勝利をもたらしたのではないかと思われる。討論会の影響力示す一つの事実が人気歌手テイラー・スウィストさんの動きである。若い層を中心に絶大な人気があるこの人はカマラ・ハリスに投票すると発信し、次のように述べた。「着実な手腕と才能を備えたリーダー。この国を混沌ではなく冷静さをもって導くことが出来れば私たちはこの国でさらに多くのことを達成できる」と。

◇自民党総裁は今日(12日)告示である。9人の争いとなる。斉藤氏野田氏は推薦人確保がならず断念。上位2人の決戦投票は必至だ。この日に合せたように文春と新潮が小泉進次郎のことを書いている。(読者に感謝)

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2024年9月11日 (水)

人生意気に感ず「袴田死刑囚の再審を機に死刑制度を考える。国境なき医師団は呼びかける。総裁選の行方」

◇袴田死刑囚の再審判決が26日に言い渡される。死刑囚は自分の扉の前で靴音が止まるか通り過ぎるかに全神経を集中すると言われる。この凝縮された時間こそ死への恐怖の実態である。多くの死刑囚は拘禁ノイローゼになるという事実は死刑の恐ろしさを物語る。

 パリ五輪、パラリンピックが幕を閉じた。革命広場が舞台になったことは時を超えた人間の生と死を甦らせる。王妃マリー・アントワネットの死を窺わせる場面も報じられた。王妃は死刑を宣告され牢獄に入れられると短い間に老婆のように変化した。そのリアルなスケッチが残されている。

 袴田再審を機に死刑制度の是非につき私たちは改めて考えねばならない。人を殺したのだから酬いとして殺されるのは当然と捉える人は多い。目には目の応報の思想は時を超えて人間の心の奥に流れていることを感じる。

 憲法は残虐な刑罰は絶対に禁ずると定める。では死刑は残虐ではないのか。最高裁は現行の絞首刑は残虐ではないとする。この判決は人の命は地球より重いと論じながら絞首は火あぶり、はり付けなどと違って残虐ではないとする。残虐か否かを絞首の瞬間に限って見ているのだ。独房の死刑囚がコツコツと近づく靴音に凍る思いで耳を傾ける事実から目をそらしている。

 袴田再審では冤罪と判断される可能性が高い。冤罪とは無実の罪である。人権を何よりも尊重する憲法を軽んじている最高裁の自己矛盾に改めて目を向けねばならない。

◇文藝春秋最新号で国境なき医師団による寄付呼びかけが報じられている。「国境なき」とは人種も宗教も超えることを意味する。現在世界各地の争いは人種や宗教の対立を背景とする。医師団は空爆と停電が続くガザで携帯電話のライトで手術を続行したと報じる。遺贈寄付資料問い合わせは03-5286-6430。協力を呼びかけたい。

◇今月27日の自民党総裁選を経て新たな日本のリーダーが誕生する。時代の大きな節目だ。日本は変わるのか、変われるのか。どのような国になるのか。有力な候補者は総選挙の実施を主張しているから、選挙の顔になる人物が総裁になる可能性が大きい。そこで43歳の小泉進次郎氏が脚光を浴びている。現在の国際情勢と日本の立場から新リーダーはトランプ、ハマス、習近平、その他世界のリーダーと渡り合うことになる。混乱と激流の中を進むのは政治家だけではなく主権者たる我々国民である。我々の自覚が日本を変え世界を創る。(読者に感謝)

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2024年9月10日 (火)

人生意気に感ず「ハングリー精神を欠いた日本の政治。野党は変化したか。パラに人間のすばらしさ を見た。兵庫県知事の責任は」

◇今月の「ふるさと塾」(28日)は2本立てで行こうと思う。私はアメリカの大統領選に格別の思い入れがあるので大詰めを迎えたこの世界劇場を熱く語りたい。しかし一方で日本の現在と直結する総裁選を語れという声も強いのだ。幕末維新や第二次世界大戦後の日本に当たるような国難に直面している。乗り越えるためには日本が変化しなければならない。それを可能にする人材は存在するのか。物の豊かさは人の心を貧しくする。ハングリー精神を失った日本人は政治をも軟弱にした。これは我々国民自身の問題である。そこで総裁選の問題を世界の動きと関連させる心境で語ろうと思う。歴史の大きな歯車はギシギシと回る。話が散漫となり焦点がぼやけることがないように注意しながら具体的な問題を語ろう。

 日本の危機は政権担当力ある野党がないことだ。「自民党をぶっ壊せ」という力が党外で育たなければ自民党は壊れないし日本の再生もない。一度試みに野党にやらせてみてはとよく言われた。その実験は無残な結果を晒した。だから自民党内の改革勢力に期待せざるを得なくなる。これが分断か再生かの問題である。しかし野党の存在を無視するのは誤りである。変化している可能性があるからだ。そこで立憲民主党の動きに注目する。当選一回の女性衆議院議員の代表選立候補に注目する。泉健太代表は「小泉進次郎来い」と意気込み「国民の側を向くまっとうな、正義が通じる国」を掲げ政権奪取の決意を語る。野党の変化はどこまで成長しているのか。これら政界の勢力地図は全て次期総裁選で決まる。その主役は主権者たる国民である。

◇パラリンピックが幕を閉じた。私が感じたことは人間の素晴らしさである。生まれつき両腕のない人が離れた的の中心に矢を命中させた。人間技とは思えない。那須与一の扇の的を思い出す。手のない人が水をかく、義足の人が空を飛ぶ。健常の姿を標準としていた自分に気付く。差別の念がどこかにあったのだ。次はアメリカである。継続していくことが世界を変えていく。人間の尊厳と基本的人権の問題と深く結び付いてパラリンピックの存在は今後大きく成長していくに違いない。

◇兵庫県知事は公益通報者保護法に関する理解に欠ける点があった。告発文書を「うそ八百」と捉えている。八百はオーバーだが真実でないものもあったと想像する。見るに耐えない幹部の醜態もあった。県議会の存在価値が問われている。信を欠いた知事の責任は大きい。(読者に感謝)

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2024年9月 9日 (月)

人生意気に感ず「小泉旋風の行方、分断か再生か。茂木幹事長の発現の真意は」

◇小泉進次郎の総裁選出馬表明で政界がにわかに騒がしくなってきた。泡立つような状況はアメリカの大統領選と呼応しているかのようだ。日本が置かれている国際状況を考えると日本は緊張と危険の最前線に居る。ロシア、中国、北朝鮮が隣国であるからだ。アメリカ大統領選は実質的に真っ只中である。アメリカが世界のリーダーたることは第一に中国とロシアとの関係で示されねばならない。同盟国日本の役割は極めて大きい。新たな総理大臣はこのような国際情勢の中で使命と役割を果たす人物でなければならない。そのためのステップが総裁選である。与党自民党からは小泉氏が勢いよく走り出し、野党からは立憲民主党が動き出した。自民党はかつてない多くの顔ぶれが名乗りをあげ驚くような公約の表明を始めた。これは自民党の真の再生の扉を開くものなのかそれとも内部崩壊の始まりなのか。日本の政治の不幸は与党がどれだけ腐敗してもこれに代わる野党が存在しないことである。今回の野党の状況を見てもこの構造が変わるとは思えない。

◇43歳の小泉氏は首相に就任したら早朝に解散し総選挙を行うと表明している。そして、憲法改正のための国民投票の実施、選択的夫婦別姓の推進、政策活動費の廃止などを打ち出している。小泉氏は今回の総裁選は自民党を本当に変えられるのは誰かが問われる選挙だと強調。その姿は髪を振り乱して「自民党をぶっ壊す」と叫んだ父の元首相を思わせる。新首相に選ばれれば44歳で初代首相に就いた伊藤博文を抜いて憲政史上最年少となる。元気の点及びメディアの取り上げ方などに於いて群を抜いている。自民党の国会議員は皆総選挙を気にしている。従って選挙の顔となる人物を総裁に求めるのは当然。これらの状況に於いて総裁選レースで一馬身前に出ているのは明らかだ。この勢いは今後加速するだろう。最も注目されるのはやがて行われる討論会だろう。厳しい目にどこまで耐えられるか注目したい。討論会といえばアメリカのハリスとトランプの対決も世界の目を集める。同様な構造の状況が進行することが面白い。

◇茂木敏充氏が注目すべき発言をしている。与党の幹事長の発言は国民の知らぬ所で重大事が進行していることを窺わせる。防衛強化のため1兆円規模の増税を決めたのに増税ゼロを打ち出したのだ。経済が成長し税収が増えているからだという。従来の自民党の敵基地攻撃論との整合性はどうなるのか。議論の行方を見たい。(読者に感謝)

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2024年9月 8日 (日)

死の川を越えて 第34回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

「分からないんだ。さやちゃん。何も分からない。俺は一晩考えた。さやちゃん、聞いてくれ。俺は思いついた。国のために尽くさなければならない。お国のために働ける機会が与えられたんだ。喜ばなくちゃならないんだよ」

「そんな。私はいや。お国のためなんて分からない。正さんと離れたくないの」

 さやは、涙の目で正助を見詰め、正助の膝に両手を置いて肩を震わせている。

「さやちゃん。まだ永久に離れると決まったわけじゃない。俺は泣かないぞ。人間には定めというものがあるんだ。どうにもならないことなんだって。それを泣いても仕方ないじゃないか。さやちゃん、俺に力を貸しておくれ。離れても心は一つじゃないか。体も一つじゃないか。さやちゃんが励ましてくれれば俺は生きられる」

「そんな、私は嫌」

「何だいさやちゃん。泣くなよ。俺まで弱気になるじゃないか」

「ええ、分かっているの。でも、でも」

 さやは激しく首を振って正助の膝に顔を埋めた。

「俺たちは、普通の人と違って大変な問題を抱えている。先日話したルカ病院の女の先生の言葉を信じようじゃないか。先生が言うには、人間の体には病気と闘う力があるそうだ。その力を強めるのは心の持ち方だと言うんだ。明るい気持ちで病気と闘うことが大切なんだって。だからさやちゃん。絶望しないで頑張ろうじゃないか」

 さやは顔を上げてうなずいた。2人はしっかりと抱き合った。更けていく夜の闇の中で湯川の流れが響いていた。

 2人は翌日、万場軍兵衛を訪ねた。

「ほう、お前のところにとうとう来たか」

 老人はそう言って、2人の顔をじっと見つめた。

「おめでとうとは言わぬ。困ったことだともわしは言わぬぞ。若い2人は十分に話し合ったことだろう。わしのできることは、側面からお前らの運命を助けることじゃ。正助よ、さやちゃんのことは心配するな。こずえに、助けになるようよく話す。ルカのマーガレット女史にも話してやろう」

 老人はそう言って、傍らの書類の山から何やら取り出して目を走らせている。

「世の中、これからどうなるのでしょうか」

 正助の声は不安そうである。

つづく

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2024年9月 7日 (土)

死の川を越えて 第33回

※土日祝日は、中村紀雄著「死の川を越えて」を連載しています。

 

早速、さやにありのままを話すと、さやは正助が驚くほど喜んだ。遺伝病でないことは。半信半疑のようであったが、心の持ち方と免疫力については、いかにも納得したようである。

「正さん、あたしうれしいわ」

「うん、俺もうれしい。生きる望みが湧いたね。力を合わせれば、その免疫力とやらも倍、増するに違いないよ」

 正助が抱きしめると、さやはその胸の中で泣いた。それから数日したある日、正助とさやは仕事が終わってから向き合っていた。正助の様子がいつもと違っていた。

「正さん、何かあったの」

 さやさんが心配そうに正助の顔をのぞき込んだ。思い詰めたような目がただならぬことを物語っている。

「大変なことが起きた」

 正助はぽつりと言った。

「何なのよ、正さん。話してよ」

 さやは泣き出さんばかりの声である。重い沈黙が流れた後で正助は口を開いた。

「召集令状が来た。お国から。本当なんだ」

「えっ。戦争に行くの」

 さやは叫んだ。

「まだ、どこへ行くのか分からない。どうなることか分からない。先日、万場老人が世界の戦争のことを話した。中国のことも話していた。あのことと関係あるのだろうか」

 正助は、きっと唇をかんでさやを見詰めた。言葉を出せない重い空気が2人を包んでいた。2人の運命はどうなるのか。2人には分からない。

 やがてさやが言った。

「病気があっても行くの」

「ハンセン病と登録されているわけではない。それに俺は軽い。だから20歳の徴兵検査でも合格した。その時、俺は国から一人前だと認められたことを喜んだ。しかし、まさか天皇陛下から召集令状が来るとは夢にも思わなかった」

「正さんはどうなるの。私たちはどうなるの」

つづく

 

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2024年9月 6日 (金)

人生意気に感ず「ハリス旋風はどこまで広がるか。ドラクロアの女神の絵。ふるさと塾から4人が市議選に。袴田死刑囚の再審迫る」

◇この世は矛盾と波乱に満ちている。遠い過去の事実は現在に繋がり現在の出来事は遠い世界の動きと連動している。事実は小説より奇なり。時の流れは果てしなく続く。人間の営みを追求する「ふるさと塾」は歴史を語ることを軸にして長く続けてきた。コロンブスの新大陸発見、フランス革命、アメリカの建国、世界大戦などなど。ある時は自分の義憤に衝き動かされることもあった。この躍動する世界の流れの中でアメリカの大統領選は歴史を語る者として目が離せない。トランプとカマラ・ハリス、2人の世紀の対決の決着が近づいた。大きな節目は10日のテレビ討論会。前回民主党はバイデン氏の惨敗で大きくつまずいた。リターンマッチに世界は固唾を呑む。若い世代でハリス氏支持が急伸している。ニューヨーク・タイムズ紙は驚くべき世論調査を報じている。8日6つの激戦州で18~19歳を対象にしたものだ。女性の支持でハリス氏がトランプ氏を38ポイントを上回った。この流れの先頭に拳を突き上げる女性闘士ハリスの姿がある。それはドラクロアが描くフランス革命(7月革命)で民衆を導く自由の女神を連想させる。自由の女神の力はどこまで続くのか。

◇来春の前橋市議選には注目が集まりそうだ。ふるさと塾から4人が立候補する。ふるさと塾は政治を扇動する場ではない。しかし、地方の政治は民主主義の原点であること、地方議会が形骸化していることを訴えてきた。私の姿勢が多少なりとも刺激になったと思うとふるさと塾の存在意義を感じる。私はおよそ30年間県都で政治活動を行い前橋市全域で支援者が健在する中で政治の道を退いた。多くの人々と培った絆を活かして4人を応援するつもり。4人はいずれも立派な社会活動を続けてきた。行政の職員だった人(岸川君・児玉君)、金融機関で活躍した人(木部君)、倫理法人会の責任ある立場の人(前原君)などだ。背水の陣の覚悟で臨んでいる。政治不信が渦巻く中で新風を起こすことが期待される。私の心中には「恥を知れ」の炎が秘かに燃える。

◇確定した袴田死刑判決の再審判決が26日に言い渡される。事件から58年。死刑囚は自分の扉の前で靴音が止まるかに全神経を集中する。かつて再審は針の穴を通る程難しかった。しかし冤罪の事実は厳として存在する。憲法は残虐な刑罰を禁ずるが判例は死刑の残虐性を否定する。私は死刑制度に反対である。袴田再審を機に死刑制度の議論が深まることを期待する。(読者に感謝)

 

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2024年9月 5日 (木)

人生意気に感ず「パラで続くメダルの波。車いすがぶつかり合う圧巻。多様性はどこまで。マングースの悲しい末路」

◇パラリンピックは人間存在を知る宝庫だ。障害故に差別と偏見の重圧に苦しむ人々。そしてそれと闘って生きる人々。人間とは何かを考え、人間の可能性を称える瞬間だ。第6日は日本のメダルラッシュであった。3つの金、それに銀と銅が続く。金は車イスラグビー、梶原大暉のバトミントン男子シングルス、そして里見紗李奈のバトミントン女子シングルス。鬼谷慶子、女子の円盤投げの銀は印象的で、山口尚秀の競泳100平泳ぎも固唾を呑んで見守った。

 車イスラグビーは決勝で格上のアメリカを遂に破っての金。繋いだ手を突き上げる選手たちの笑顔の光景は障害などを忘れた誇りに満ちている。車イス同志が激しくぶつかり合う姿は豪快で車いすの両輪は選手たちの身体の一部になっていた。

 円盤投げの鬼谷は銀を得て「信じられない、夢か」と語る。大学で脳幹部に炎症が起こる難病を発症し車イス生活に。練習で取り入れていたハンマー投げのフィニッシュ動作を意識したら円盤投げの飛距離がアップしたという。夫婦の二人三脚ぶりは円盤投げとハンマー投げの二人三脚に思える。

 トランスジェンダー公表の選手の活躍が報じられている。国際パラ委員会によるとトランスジェンダーを公表した選手は初めてという。ある時妻に「女性になりたい」と告白しホルモン療法を続けたという。性別変更して女子400m(視覚障害T12)準決勝まで進んだ。この人は言う。「私の夢が叶った日。もう差別や偏見は聞きたくない」と。多様性を大きく掲げるパラリンピックはどこへ向うのか。

◇かつてマングースとハブの闘いを見たことがある。猛毒の蛇とマングースの死闘は悲しい宿命の対決に見えた。巻き付こうとするハブの輪をかいくぐって頭をかみ砕くマングースの動きは遺伝子という本能に決定付けられたもの。現在は動物愛護の観点から禁じられている。環境省は3日奄美大島でマングースの根絶を宣言した。マングースは毒蛇ハブ対策として1979年約30匹が放たれた。マングースは増え続けハブ対策の効果はなく逆に希少な野生動物を襲う害が大きくなった。ハブ対策として効果がないのはハブは夜行性なのにマングースは昼行性だからである。マングースが「特定外来生物」に指定されたことで駆除が本格化、苦心を重ね根絶宣言に至った。奄美という大きな島で定着したマングースを根絶した例はない。希少種を救うことになったことに大きな意義があった。マングースの運命に心が痛む。(読者に感謝)

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2024年9月 4日 (水)

人生意気に感ず「両手のない名手の衝撃、パリパラは夢を広げる。ケネディ氏の異常な行動とトランプの焦り。総裁選の行方」

◇フランス革命の地パリでのパラリンピックが胸を打つ。障害を乗り越えての死闘が輝く。中でも一際迫るのはアーチェリーで金を得たアメリカのマット・スタッツマンである。生まれつき両腕がないこの人は驚くべき工夫で矢を放つ。「腕のない名手」の技の冴えは信じ難い。15射のうち1度を除いて全て10点満点という精度を示した。2015年には健常者も含め最も遠い的を射抜きギネス世界記録を打ち立てた。そこに至るまでにいかに苦しい鍛錬があったかを想像する。この人を含めパラリンピックの選手たちの姿は人間の可能性の素晴らしさを示す。全ての障害者に生きる勇気を与えるもの。否、私たちの全てに希望と夢を与えるものだ。

◇アメリカ大統領選でケネディ氏が異常な動きを見せている。名門ケネディ家の一員でケネディ元大統領の甥である。環境運動で大きな存在感を示しタイム誌の「地球の英雄」の一人に選ばれたこともある。この人物がトランプ氏と手を握った。環境をめぐる主義主張を放り出して。このことは何を意味するのか。ケネディ氏の特異性と共にトランプ氏の大きな焦りを示すものと私は思う。墓穴を掘るに等しい。ケネディ氏はハリス陣営に相手にされず兄弟からは「私たちの父と家族が最も大切にしてきた価値観への裏切りであり悲しい物語の悲しい結末だ」と表明した。私たちの父とはケネディ元大統領の弟、故ロバート・ケネディ氏である。トランプ氏の行動は共和党の良識ある人々の離反を招き更には無党派層の冷笑をかうことになるだろう。10日の公開討論会が目前に迫った。

◇上武道路の3人死亡事故に遺族及び社会の怒りが沸いている。亡くなった湊斗ちゃんの母は事故後に出産し、なぜ呑んで運転したのかと怒る。遺族は悔しくて仕方がない。「会社や家族は分からなかったのか」、「会社の反省の態度は表面的に見える」と憤っている。69歳の運転手は危険運転致死容疑で逮捕された。専門家は20年から30年の懲役かとコメントする。この人物は刑務所で人生を事実上終えることになるだろう。運転中のアルコールを検知し運転を停止させる技術が開発され取り入れているトラック会社もある。この事故は社会の交通規制を変える一つの契機になるかも知れない。

◇総裁選の候補者が雨後の竹の子のように賑やかである。裏金で地に落ちた政治の信頼は再生できるのか。国民の怒りは深い。台風10号の渦巻く濁流と一連の熱波も呼応しているようだ。(読者に感謝)

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