2019年5月23日 (木)

人生意気に感ず「即位パレードの危機。狂気の自爆テロ。ふるさと塾で令和を」

◇天皇即位パレードのコースが発表された。即位は10月22日。皇居から赤坂御所までの4.6キロを約30分でオープンカーは走行する。両陛下は、新調のトヨタのセンチュリーに乗られる。当日は特別に休日になる。

 沿道は空前の人出になるに違いない。無事に済むことを神に祈るばかりである。テロが心配である。隙だらけの日本に、これまでテロが発生しないことが不思議に思われる。

 4.6キロ、30分を守るための対策に警察など治安当局は最大限神経を使っているはず。一個の爆竹が鳴らされただけで、一本のいたずら電話で、大混乱に陥る可能性がある。この行事は、治安対策の上で来年のオリンピックの前哨戦ともいえるが、平和国家日本を象徴する行事であることを考えると、その重大性は測り知れない。正に日本が試されている。世界の注目が注がれている。

◇スリランカの同時多発テロから1か月が過ぎた。250人以上が犠牲となった悲惨な事件は何を意味するのか。犯行は「イスラム国」の仕業とされる。シリアとイラクで勢力を誇っていた「イスラム国」は今年3月壊滅したがそのメンバーは世界に散って再起を期していると言われる。彼らは現在、世界の各地に支配地域である「州」の設立を図っている。彼らの脳髄に迄食い込んだ狂気の思想は自爆テロを平然とやってのけるのだから、恐ろしい。「イスラム国」の最大の敵はアメリカだった。同盟国日本もアメリカと同一視して標的にすると表明していた。「イスラム国」の残党が日本を狙うのは当然と見なくてはならない。

 アメリカの大統領トランプが間もなくやってくる。大相撲の千秋楽に国技館に登場し、27日には天皇に会見する予定だ。「イスラム国」の残党にとって、天皇即位のパレード、そしてトランプの動きは最大にして絶好のチャンスと思うだろう。「令和」には格調のある平和という意味が込められている。令和のスタートに当たり令和が試練の時を迎えている。

◇今月の「ふるさと未来塾」は「滅亡に向かうのか令和」をテーマにする。25日(土)6時半、いつも通り市の総合福祉会館である。人口減少は止まらず人手不足は加速し、認知症患者700万人の時代が迫る。このまま有効な手を打てなければ、日本は底なし沼に沈み込んでいく。明治の人口は今より遥かに少なかったという人がいるが、人間の質が違う。心の無い若者が支配的となり日本は内部崩壊の危機にある。(読者に感謝)

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2019年5月22日 (水)

人生意気に感ず「駒場同窓会の話題。青春の熱き思い出」

◇20日、駒場寮同室者の会に出た。キャンパスの一角「かんらん」というレストラン。昔は構内にこういうハイカラはなかった。バンカラの象徴ともいうべき二つの寮が姿を消すと共に構内の雰囲気も一変していた。かつては学生運動のメッカで、スピーカーから流れる激しいアジ演説の声が飛び交っていた。林立する立て看板を書く学生は看板を書くために入学してきたのかと思わせる程その筆さばきは巧みであった。今はその面影はかげを潜めてこじんまりした看板が定められた位置にお行儀よく立っている。政治色のものは見当たらない。その光景は活力を失った現代の東大を物語るようであった。

 少し早く着いたので時計塔の本館に入った。今は一号館という表示があった。かつて寮は不夜城のように騒然として、特に私のいた部屋は落ち着いて勉強できる所ではなかったので、秘かにここで本を読んだ。古い建物は昔のままで、私が夜窓から入った部屋も昔の姿を保っていた。60数年前にタイムスリップしたような不思議な感覚にひたって、時が止まったような状況にしばし我を忘れていた。

◇かんらんに集まったのは10人。全員が老境を迎えた人々で一瞬戸惑ったがすぐに昔の顔に戻って話が弾んだ。亡くなった人の話、ガンを克服したこと、妻を失った悲しみなど、それぞれが人生の歴史を語って尽きなかった。

 国会議員の選挙に出て敗れた人が3人いた。N君は私の結婚式に出てとんでもないことを発言した。「何か寮の思い出を」と求められて話し出したが、何かを話そうとして一瞬口をつぐみ「これを話すと差し障りがあるのでやめます」と発言、会場は水を打ったように静かになった。「あれは何だったの」と訊くと、何のことはない「いや中村さんがいつものろけていたのでそれをばらそうと思った」と振り返っていた。この妻は40歳で世を去った。妻の兄は妹の死に際し「限りなく 熱き墓なり 妹よ」と歌を詠んだ。炎のような人生の一瞬を共にした女性であった。

◇貴重な情報交換もこの日の収穫であった。このままでは日本は危ないというのが共通の認識だった。役人志望の学生が少なくなっていること、安倍首相はかつて婚外子を設けたなどの話も話題になった。関東国税局長官をやったS君は、ある時押入れの中に3億円余りの札束が隠されているのを発見し肝を潰したと語った。(読者に感謝)

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2019年5月21日 (火)

人生意気に感ず「やがて来る認知症社会の地獄。令和の先に待つもの。田中正造の文明観」

◇政府は16日、認知症対策の原案を明らかにした。70代の認知症の割合を2025年までに6%減らす目標である。高齢化が進む日本で、最大の課題の一つは認知症問題である。認知症患者数100万人の時代に入りつつある。人間にとって脳の劣化という生物的変化は避けがたい。人口減少が同時に進む。日本は滅亡の淵に立っている。正に国難の時である。認知症を避けて健康寿命を実現していくことは個人の願いであると同時に社会全体にとっても最大の課題である。

◇2042年問題は迫りくる大問題である。団塊ジュニア世代がすべて高齢者になる。そして、高齢者人口は4000万人のピークに達する。現在人生百歳時代ということが盛んに言われ出した。2042年頃は恐らく本格的な人生百歳の流れの中にあるかもしれない。その頃の認知症状況を想像すると空恐ろしい。

 人生百年の時代は人生認知症の時代かもしれないのだ。統計によれば、そこに至るまでに次のことが予想されている。令和6年、団塊世代が全て75歳以上になる。3人に1人が65歳という超高齢社会である。そして令和7年には認知症患者は700万人に達するという。また、驚くべきことは、令和17年には男性は3人に1人、女性は5人に1人が生涯未婚になるという。

 人間のエネルギー、野生のパワーが落ちている。男性については特に草食系ということが言われ、オスの能力が失われているといわれる。子どもが生まれない原因の一つとして精子に力がないことが指摘されている。原因は複雑に絡み合っている。環境の悪化、有害物質の氾濫等々。これらは哲学のない現代文明の結果なのか、だとすれば、人類は全体として破滅に向かっているのかもしれない。

◇私は今、田中正造を研究しているが、この人は百年も前に文明を痛烈に批判した。「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」と。ところが現実はどうかと正造は次のように叫んだ。「今、文明は虚偽虚飾なり、私欲なり、露骨的強盗なり」と。現代人が今、文明に害されているという目から見れば、田中正造のこの言葉は今日的問題として私の胸に突き刺さる。福島第一原発事故は現代文明の負の側面を物語る。今日の社会の最大の課題の一つは田中のような「狂人」が存在しないことであろう。(読者に感謝)

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2019年5月20日 (月)

人生意気に感ず「東大寮の同窓会に。心愛(みあ)さん虐待死事件」

◇今日20日、駒場寮同室者の会に出席する。およそ55年ぶりの人もいる。元川崎市長Iさんの呼びかけで実現することになった。世の移りは誠に激しく、一面幻のようである。喧騒の駒場時代が甦る。北寮、明寮、中寮は取り壊された。大きな寮は自治制で絶えず何かが起きていた。私は寮委員をしていたが委員の仲間には後に国際刑事警察(ICPO)理事となったK君もいた。寮の習慣や行事には一高以来のものがあった。東大には、よく言われるように、東大「まで」の人と東大「から」の人があるようだ。社会の底辺から立ち上がった私は後者を自覚して生きてきた。今日の私の最大の関心事は半世紀の風雪をどのようにそれぞれの風貌に刻んでいるかということである。人生の終盤を迎える中で、「まで」と「から」のドラマが聞けるかもしれない。福井県からは元衆院議員のM君も出席する。私はいくつかの行事を整理して上京することにした。

◇話題となってきた女児虐待死事件で傷害ほう助罪に問われた母親の初公判が16日に行われた。現代社会の病根を窺わせるような事件は限りなく悲しい。心愛(みあ)さんと母親なぎさ被告の顔写真は事実は小説より奇なりを物語っているようだ。心愛という名前を付けた時の両親の心には溢れる愛情があったに違いない。人間の心は不思議なものだ。父親勇一郎被告に何があったのか。70席の傍聴券を約460人が求めたという。

 心愛さんは、「毎日地獄だった。夜中にずっと立たされた」と打ち明けている。父親の虐待がエスカレートする様は鬼気迫るもののようだ。妻・なぎさ被告に対する激しいDVもあった。それでも母はなぜ我が子を命懸けで助けようとしなかったのか。それが出来たのにしなかった。検事が被告に「傷害幇助罪」を求めるポイントはそこにある。この種の事件が繰り返し起きている。世の母親の中には胸に手を当ててこの事件と裁判の推移を見詰めている人も多いに違いない。裁判員たちはどのように受け止めるか。最大の関心事は執行猶予がつくかどうかである。

◇週一の「へいわ」の講義で、今アンクルトムの小屋を語っている。奴隷商人に売られようとする我が子を助けるため、母親は我が子を抱いて氷のオハイオ川に飛び込む。後を追う奴隷商人はそれを見て悪魔が乗り移っていると驚く。女は弱し、されど母は強しなのだ。母の生きる力が今問われている。(読者に感謝)

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2019年5月19日 (日)

小説「死の川を越えて」第193話

 

「この方は万場先生です。私は、下村正助といいます」

「お邪魔しますぞ。私は内務大臣の安田謙岳です」

「万場軍兵衛と申します。こんな所に高名な大臣に足を踏み入れて頂き、誠に恐縮でございます」

「凄い書物。正に松下村塾ですな。今、木檜先生が湯の沢の文化を示すと言われたが、その意味が分かりましたここでは何を教えますかな」

「ちと大げさになりますが、生きる力です。身近かな例をあげて、人間の自由などを話すこともあります。政治問題、社会問題も取り上げます。難しいことを易しく易しく話すことを心掛けております。最近は、前知事がこの湯の沢の移転に関する請願を国に出しましたが、その勉強会を致しました」

「ほほー、それは、今日、私が視察する目的ではないか」

 これを受けて木檜が言った。

「実は大臣、私とこの森山県議は、この塾の特別講師であります。は、は、は」

「おお、それは立派、名誉なことです。この松下村塾の名に恥じない講義をお願いしますぞ。は、は、は。いや、この湯の沢の実態が実によく分かりました。御老人、松下村塾はしっかり頑張って下さい」(月火掲載)

 安田内相が生生塾を出た時、森山県議がすっと進み出て恭(うやうや)しく頭を下げて言った。

「大臣、是非、目通り願いたい者がおります」

 森山の合図でそっと進み出て会釈する女がいた。白いドレスをまとった姿は一見して西洋人である。安田内相は非常に驚いた表情である。

「この湯の沢で、ハンセンの人たちの救済に当たっているマーガレット・リーさんです」

「おお、あなたがイギリス人の。噂は聞いておりました。英国の貴族の出で、大変な私財を投げ打って患者救済に当たっておられるとか。見上げた志です。一昨年昭和天皇即位式の時の国の褒章授与に名を連ねられたのを私も承知しております。こちらからお訪ねすべきであった」

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2019年5月18日 (土)

小説「死の川を越えて」第192話

安田大臣の一行は湯の沢集落に入った。大臣にはハンセン病の人たちが暮らす集落の実態を見たいという決意があった。安田の胸には故郷熊本本妙寺のハンセン病の集落の姿があった。

「こんなに多くの家々があるのですか。商店も旅館もある。あれは郵便局ではないか。これら一帯がみなハンセン病の人々の町なのか。整然として、無法地帯ではない」

 これを聞いて待っていたとばかりに木檜は説明する。

「はい大臣。選挙で区長を選びます。税金も納めているのです。かなりの識者が集まっていまして意識も高いのです。世界広しと言えど、このような所はありません。日本の文化の高さ、文明の高さを示す象徴です。更に大臣が驚かれることがございます」

「ほほー。それは何か」

「すぐに分かります」

 しばらく進んで内務大臣は一点に目を止めた。

「何じゃ、これは。湯川生生塾とある」

 直ちに木檜は言った。

「驚かれることとはこれです。現代の松下村塾でございます。子どもを教え、志ある大人たちに先生が難しい政治や歴史を易しく説いて教えているのです」

「驚きであるな。立ち寄っても構わんであろうか」

「現職の大臣がここに立ち寄ったとなれば、末代までの語り草となります。ところで、周りの役人の皆さんが心配の目付きですがそれは無用です。この塾に集まる人は、今、病気は出ておりません」

「は、は。見損なうでない。これでも私は、済々黌(せいせいこう)で学んだ肥後もっこすだ。恐いものなどあるものか」

「いや恐れ入りました。正助君、それでは」

 木檜は後方にいた正助を招いて何やら囁いた。正助は走り込んで行ったがすぐに現われて大臣を招き入れた。

 

※土日祝日は中村紀雄著・小説「死の川を越えて」を連載しています。

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2019年5月17日 (金)

人生意気に感ず「トランプ大統領が大相撲に。そして令和天皇に会う意味」

◇トランプ大統領が25日、大統領専用機で到着する。この来日には特別の注目が集まっている。まず、令和天皇に即位後、外国首脳として初めて会見することだ。両陛下は即位後の大仕事として緊張されるだろう。トランプは新しい象徴天皇に接しどのような感慨を抱くであろうか。

 また、大統領は今行われている大相撲の千秋楽を観戦する。ここでは米国政府特注の賞杯を優勝力士に自ら授与する。巨漢である大統領が土俵に上がる姿に注目が集まるだろう。相撲界にとって前代未聞の出来事は力士たちに刺激を与えているのではないか。

 アメリカ人が日本に来て力士を見た出来事として1854年(安政1)のペリー来航時の記録がある。幕府は日本人の力を少しでも誇示するために裸の巨漢力士に俵をかつがせたりした。あれから165年が経過して、大統領が自ら土俵に立って優勝杯を与える。この間両国は太平洋戦で多くの命を失った。それを乗り越えて日米同盟がある。大統領の大相撲観戦は日米の絆の健在さを示す意味もある。

◇天皇制も大相撲も日本の伝統文化である。トランプ大統領は宮中で天皇と会い、大相撲の土俵に立って日本の伝統文化について何を感ずるであろうか。中国が超大国として米国と覇権を争う時代になった。その間に立つ日本の役割は増々重要である。そして日本の役割を支える重要な柱の一つは伝統文化である。日本は中国との間で有史以来の絆を育んできた。日中を結ぶものは脈々とそして連綿と続く東洋文明であり伝統の文化である。明治以来日本は西洋の仲間入りをしたが、このことは変わらない。今世界の平和の上で重要なことは東西両文明の共存である。一方の文明が世界を支配することはあり得ない。日本は両文明の間にあって特異な立場に立つ。両文明を媒介し補完させることは日本のみが成し得ることだ。トランプ大統領は宮城に入り天皇に接し、日本の伝統文化の意味を肌で感じるに違いない。

◇安倍首相とは拉致問題が話し合われ拉致被害者の家族とも会うという。拉致問題は人権侵害の極致である。人権の国アメリカは拉致を自らの問題と考えるべきだ。北朝鮮は今、歴史的な干ばつに襲われ多くの国民は飢えに直面しているといわれる。拉致問題を解決する正に正念場である。安倍政権にとっても正念場なのだ。(読者に感謝)

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2019年5月16日 (木)

人生意気に感ず「無思慮な国会議員の発言。平和憲法は北方領土交渉の援軍。大麻問題が問うもの」

◇新聞の記事に刺激されて「望郷の叫び」の中の一場面を書いたら反響があった。やはり多くの日本人にとってシベリアは深刻な課題になっていることを窺わせる。ロシアは恐い国なのだ。日本の敗戦に際し、当時のソ連は北海道の半分を要求したと言われる。もしそれが実現していたら、北方領土の現状からして想像するだけでも大変な事態が続いていたに違いない。

◇丸山衆議院の発言が波紋を引き起こしている。丸山氏は、北方領土の国後島交流に参加して、北方領土問題に関し「戦争しないとどうしようもない」と発言した。国会議員としていかにも配慮を欠いた発言である。日本としては、ロシアという国の実態を冷静に見詰めた上で外交交渉によって忍耐強く解決の道を探るほかはない。現在、複雑な国際情勢の下で、交渉は微妙な段階にあると思われる。政治の舞台では火消に躍起になっている。この議員が所属する維新の党は除名処分を決定し、菅官房長官は「誠に遺憾」と不快感をあらわにした。

 丸山衆院議員の発言は、国会議員の質を窺わせるものである。この人は日本国憲法の本質をどのように理解しているのであろうか。平和憲法の存在は北方領土問題に関して重要なポイントになっている筈だ。なぜなら米ロの対立構造の中で、北方領土の返還がアメリカに有利に働き、ロシアの不利になることをロシアは懸念しているからだ。戦争をしない平和国家日本への返還ということがロシア政府が国民を説得する上で重要なのである。

 私たちは、平和を高く掲げる日本国憲法の存在が北方領土交渉に於いて大きな援軍となっていることを知るべきである。仮に日本が憲法を改正して昔の軍国主義の方向に戻るという誤解を与えるなら、ロシアの態度は硬化するに違いない。

◇大麻の問題が若者の間で深刻になっている。享楽の世相が広がる中で、亡国の薬物を食い止めなければならない。最近の摘発者の特徴はその半数以上が29歳以下の若者であることである。摘発数の下に暗黒の世界が広がっている不気味さを感じる。「他人に迷惑をかければ薬物使用は個人の自由」という考えが広がっていると言われる。個人は社会と繋がっている。個人が依存症になっていくことは他人の迷惑に結びついている。他人に迷惑をかけない薬物使用など有り得ないのだ。(読者に感謝)

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2019年5月15日 (水)

人生意気に感ず「シベリア強制抑留の記事から学ぶべきこと」

◇久々にシベリア強制抑留の記事が新聞に載った。厚労省がカザフスタンから日本人抑留者2万人分の資料を入手した。同記事にはカザフでの抑留経験者のこともあり、この人は現在91歳で「思い出すのが辛い」と語る。

 私は平成16年に元抑留者たちとシベリア強制抑留地跡を訪ねて「望郷の叫び」を書いた。シベリア抑留の記事が載るたびに訪問で受けた衝撃が甦る。2人の元抑留者はこの世を去ったが生きていれば100歳に近い。このことは強制抑留の事実が歴史の彼方に遠ざかろうとしていることを意味する。私は「怨みの大地」の「望郷の叫び」を少しでも伝えなければという苛立ちに駆られる。

 元抑留者のTさんはやっとナホトカの港を去る時、大地を蹴って「こんな所に二度と来るものか」と心の中で叫んだ。また、夏草の中に立つ「日本人よ静かに眠れ」と書かれた白い墓標の前で「先に帰って悪かった」と大声で泣いた。また、もう一人のOさんは黒パンを分ける時の凄まじさを語った。「飢えの前で人間は動物になってしまうのです」。パンを分ける時1ミリでも大きいか小さいかを決して見逃さない、また隣りのベッドの男が死に近づいた時その手に握られた黒パンが手から落ちるのをまわりの者は今か今かと待受けたという。

 旧ソ連軍が終戦後旧満州で暴虐の限りを尽くしたことを私は一人の女性の姿を通して「炎の山河」で書いた。シベリアでは、同じ頃旧満州を中心とした地域から約60万人の男たちが騙されて運ばれ飢えと酷寒と重労働のために約6万人が死んだ。孤独に弱い日本人は故郷の妻や子を思い収容所で作った歌を歌って耐えた。「故郷は遥かな雲のかげ、いつの日に妻や子とあえるやら、男泣きする夢ばかり」(ハバロフスク小唄)、「今日もくれゆく異国の丘で、友よつらかろ切なかろ、がまんだ待ってろ嵐が過ぎりゃ帰る日も来る春も来る」(異国の丘)。私はシベリアの大地に立って地の底からこの歌声が聞こえて来るような気がした。もう一つここで記すことがある。著書の中で前年に小泉首相がシベリアの慰霊碑を訪ねたことを書いた。私たちを案内した人は「小泉さんは零下35度の中でコートを脱ぎ大地に手をついて祈った。ロシア人も涙を流しました」と語った。令和になった。北方領土が交渉されているが、その陰には多くの抑留者の怨みの声がある。この過酷な現実を踏まえて日本の平和を考えねばならない。(読者に感謝)

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2019年5月14日 (火)

人生意気に感ず「憂うべき戦争の変化。北の挑発は何を。象徴天皇の姿」

◇11日、高崎音楽センターで前防衛大臣の講演を聴いた。その中で驚くべきことが語られた。前大臣が「腰を抜かすようなこと」と表現したことは、2014年ロシアのクリミア侵略の状況である。宇宙、サイバー、電磁波という用語で語られたことは近代戦を一変させるもので、アメリカのマクマスター氏が「このままではアメリカは勝てない」と証言した事実と共に、聴く者の肝を冷やすような話で、私はSFの世界かと思い、千数百の聴衆は水を打ったように静まり返っていた。

 要点は次のようであった。ロシアの電磁波攻撃により、停電が起き、ドローンは落ち、レーダーは真っ白になって機能しなくなった。また砲弾の信管が働かなくなることまで生じたという。「ハイブリッド戦」という表現が使われた。今、アメリカ議会を中心にして大きな問題になっているトランプ大統領に対するサイバー攻撃を連想しながら私はこの話を聞いた。このような現代の戦争の様相は日本の安全保障にも大きく関わる。

◇この講演は戦争の現実がますます機械化していることを窺わせる。事実、戦争のAI(人口知能)化が進んでいると言われる。戦争から心の要素が失われ、指先一つで重大事が動く冷たい戦争の世界が広がっている。戦争の恐怖、平和の尊さは、このような冷酷な事実を踏まえて考えなければならない。

 北朝鮮がまたミサイルで挑発行為を行っている。講演で「シビリアンコントロール」という言葉が使われたが、この民主的抑制が効かない独裁国のミサイルと核は「何とかの刃物」の刃物、凶器である。経済制裁によって北朝鮮の国内経済は、私が想像する以上に追い詰められているらしい。ミサイルの発射はそのあがきを示すものかもしれない。「窮鼠猫を噛む」という諺を思い出す。トランプ大統領を思慮を欠いた猫と評する人もいる。間に立つ令和の日本の存在を脅かす世界情勢である。

◇「水運史から世界の水へ」の主要部を読んだ。令和天皇の皇太子時代の講演録である。私が感じたことは「象徴制」を担う天皇にふさわしい姿である。「日本国民統合の象徴(憲法第一条)」として文化の面は非常に重要である。水の惑星といわれる地球の水は全ての命を支えるもの。天皇は水を汲むネパールの女性の光景を水に取り組む原点と語る。私たちは陛下と共に水の大切さをこれからかみ締めていかねばならない。(読者に感謝)

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«人生意気に感ず「アルバイト留学生に花丸。真面目な勤務ぶりに驚く」